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Dr.新原の健康講座

2021年2月19日 金曜日 15:22

治験の話

最近、治験参加者を募集する宣伝をよく目にします。新薬や医療器具の開発のため治験は不可欠で、製薬会社や医療器具メーカーは、安全性そして効果を証明するために莫大な資金を投じて治験を実施します。治験の対象となる方々は、特定の疾患を持つ患者さんたちであったり、健康な方々であったり、または両方であったり、治験の目的により異なります。

治験に参加するということは、実験台になると思われる方も多いでしょう。確かにそれは否定できません。しかし治験は、計画時にまず厳しい倫理委員会の許可を得ることから始まります。少しでも必要以上の危険性が予測される場合、治験は許可されず、先に進むことは出来ません。それから、治験に参加することによりメリットがある場合もあります。一部の末期ガン患者などにとって、治験に参加することは、認定前ではあるけれども、効き目のある可能性の高い薬を投与してもらえる唯一のチャンスでもあります。

多くの治験では、参加者に交通費やその他の経費が支払われますが、参加者はボランティアであるのが前提ですので、時間に対する謝礼は一般的にありません。治験によっては入院を要するものもありますが、その場合、必要な食事、病院での生活のため必要なものは備えられます。当然のことですが、治験が目的で入院した時の費用は無料です。外来中心の治験でも、食事や飲み物が提供される場合もありますが、大抵の場合は普通の外来通院のようなものです。

治験に参加されるのはご本人の自由で、決して誰にも強制されてはなりません。献血と同じように、一番の目的は将来どなたかの治療の役に立つということです。しかし上記のようにある種の疾患のある患者さんにとっては、治験参加が最後のチャンスという場合も結構あります。

もし治験に参加する機会がありましたら、主治医ともしっかりと相談することをお勧めいたします。その上で治験の主催者とよく連絡し合い、副作用の可能性などよく把握した上で同意書に署名してください。治験の途中で少しでも体に異常を感じられたら、すぐに報告しなければなりません。それから参加されるからには、関係者の指示にしっかりと従うか、もしそれが難しいのなら辞めるべきです。治験から降りるのは、どの時点でも参加者の自由です。ただし、薬や器具によっては、急に辞めてしまうと体にとても負担となるものがありますので、辞めるにあたっても、関係者の指示によく従ってください。それでは。

2021年1月20日 水曜日 15:15

褥瘡(じょくそう)の話

褥瘡とはとても難しい漢字ですが、床ずれを意味する医学用語です。体を自由に動かすことのできない患者さんたち、そしてその周りの方々は大抵、褥瘡がどれほど大きな問題であり、厄介なものであるかをご存知です。これは体の一部に圧力が常にかかるため、血行に障害を起こすことから始まる疾患ですが、その重篤さは4段階に分けて示されます。第1度は患部の辺りが赤くなり、炎症を起こした状態になります。第2度になりますと、それは皮膚を壊し、湿り気を持ちます。小さな水ぶくれなどもできる時があります。第3度では皮膚の下にある皮下脂肪組織まで壊死が広がり、とても治り難い状態になります。第4度では筋肉を越え骨まで患部が広がり、問題はとても深刻です。

褥瘡は患部にかかる圧力を減らし、血行を良くするだけで、回復に向かうものもありますが、時にはそれだけでは改善しないケースもあり治癒に時間と手間のかかるものも多いです。特に、重篤度が高いものはいくら圧力を減らしても、なかなか治らない場合が多いです。

対策として一番大切なのは、なんと言っても予防です。患者さんが長期的に寝たきりになってしまうときには、定期的にその体勢を変えてあげて、一箇所だけに圧力がかかり続けないようにすることが大切です。それから、圧力のかかりやすい部分に柔らかいクッションなどをおいて、圧力をできるだけ分散することも大切です。

体勢を変えるのは日中できれば1時間おきくらいにしていただきたいです。夜の間は、看病する方にも負担が大き過ぎますし、患者さんの眠りをあまり妨げるのは良くないので、ほとんどの場合は患者さんをあまり動かさなくても良いです。理想的には、できるだけ良いマットレスを使うことで圧力が一箇所にかかり過ぎないようにされることです。

それから、圧力のかかる体の部分が清潔で適度の湿り気を持たせる状態にしておくことも大切です。あまり乾きすぎないように、時々ローションなどを塗りこみ、皮膚の弾力性を保つのも予防につながります。バランスの取れた栄養摂取もとても重要です。

褥瘡ができてしまったら、とにかく患部の血行をよくしなければなりません。圧力は避けられるだけ避けます。膿などを十分に洗い流し、清潔にすることもとても大切です。しかし消毒薬をたくさん使うのではなく、きれいな水か生理食塩水などで洗わなければなりません。できれば1日2回洗浄していただきたいです。壊死してしまった部分は洗浄だけで排除されることもありますが、時には簡単な手術による摘出も必要とされます。感染してしまった場合、たいてい抗生物質をつかいます。

栄養素は予防にも治療にも大切で、グルタミンなどのアミノ酸、微量の亜鉛なども褥瘡の治癒を早める作用がありますので主治医の指示に従ってお使いください。

2020年12月18日 金曜日 15:12

拒食症の話

拒食症とは摂食障害のひとつで、文字どおり食べる事を拒むために起こる障害です。食事を拒むという選択をする意味自体が疾患であり、普通の栄養失調などとは別にされ、医学的には精神疾患のひとつと考えられています。実際にその精神状態を示すかのように、この病気は医学関係者達のあいだでは神経性無食欲症、または神経性食欲不振症という専門用語で呼ばれています。

当たり前の事ですが、ほとんどの人が食事に対し興味を持ち、また食事は生きていくために必要な行動です。それは拒食症の患者さんたちにも大抵の場合当てはまります。では彼らにとって、何が問題になっているのでしょうか?それはどうやら、自分の外見や内面に対する劣等感が大半のようです。矛盾しているのは、客観的には見て外見に劣等感をどうして持つのかと思えるような、整った容姿の方々が拒食症に苦しんでいる事が多いのです。

歪んだ自分のイメージを持つようになった要因として、心理的、社会的、生物学的な要素が考えられます。簡単に説明しますと、心理的要因として、虐待を受けたり、心が傷つくような言葉をあびせられたりした事が、精神状態に影響する状況をつくっている場合があります。社会的要因とは、マスコミや芸能界などの求める異常な基準が一般人に不安感をもたらせ、精神状態が不安定になる場合などを指します。そして最後に生物学的要因ですが、これは脳内の先天性または後天性で原因不明の変化により拒食症になる場合を指します。

拒食症の治療法は、二つの面をバランスよく診て対応していく事が大切です。まず第一に栄養素の面ですが、少しずつカロリー、ビタミンそして微量養分の一日摂取を正常に近づけていくことです。勿論、経口による正常量の栄養素摂取が最終目標ですが、身体が衰弱してしまっているほどの、状態が既に深刻である時には高カロリー輸液などを最初に必要とする場合もあります。また、同時に多くの臓器がすでに不全症を起こしている場合はそれぞれの臓器をモニターしなければなりません。たとえば心臓など、不整脈のあるかないかを確認し、それを防ぐ、または治療する対策をします。言うまでも無く、これらは医師を始めとする治療チームの仕事です。
続いて第二の点ですが、それは精神面についてです。前述のようにこの疾患は精神的なものが大きな原因となっています。ですから、心療内科治療を中心とした療法を必要とします。他の疾患と同じく早期治療法が治療率を高めますので、拒食症が疑われたらすぐに主治医に相談する事をお勧めいたします。そして最後に、拒食症は患者の周りの方々のサポートを多く必要とする病気である事を強調して今日はペンを置くことにします。それでは次回まで。

2020年11月20日 金曜日 15:08

整形手術の話

いつかはこのコラムでお話しないといけない題と思いながらもなかなか、そうできなかったものが今回の「整形手術」についてです。わたしの主観がとしても強く出てしまうのが懸念されたのが一番の理由です。客観的にお話を進めていくように努力します。

整形手術は時とともに大きく発達してきました。それは需要が多いからだと思います。整形外科の宣伝は他の医療分野よりも比例外に多く、マスコミでも毎日にようにこのトピックに関して何らかの形で取り上げられ、ほとんどの場合、保険を利用することもできないのに、たくさんの方が手術を受けています。

整形手術は大きく分けますと2種類あり、第一は外見だけではなく体の部分の機能的な修復のためのものです。口唇口蓋裂などが例の一つです。そして第二は外見だけに焦点を置いたもので、これがいわゆる現在の整形手術のほとんどのケースです。外見の向上、機能の改善はどちらも私たちにとって大切です。外見の向上が精神的な面で大きく影響することは学会でも認められています。そして、体の機能改善は言うまでも無く私達にとって欠かせないものと言っても過言ではないでしょう。手術も最近ではとても進歩し、安全性においても、成功率においても向上しています。成功例をみると、術前と比べとても良い結果が出て、その上、専門家が見ても手術したのかどうかも分かりにくいぐらいです。

手術は込み入った永久的なものから、一時的な注射などまで様々ですので、主に外見のための整形手術を受けることをお考えの方は、十分に手術の種類、外科医の成功例などを良く調べた上で最終結論を出されるようにしてください。執刀医により結果は大きく変わります。そして執刀医が得意としている手術が何であるかを熟知しておくべきです。それから、あまり怖がらせるつもりではありませんが、インターネットで整形手術の失敗例、そして一般的な結果をよく見ておくべきです。整形外科医個人のサイトでは、成功例、それも特別上手くできたケースの写真を載せることが多くあっても、失敗例は全くと言っていいほど載せてありません。しかし、一般のサイトに行けば、失敗例、実際に手術を受けた患者さんの意見も聞くことができます。

 

最後に自分の意見を述べさていただくと、80%の整形手術を望む方の外見「なぜこんなに素晴らしい顔、体型を変えようとするのだろうか」と思うほど素敵です。それから、私の知る限り少なくとも30%から50%の患者さんは術後の姿に満足されません。整形手術はとても大切な分野です。でも健康や幸せのために必ずしも役立っているとは思えないケースもあります。ですから、手術を受けたいと思われれる方は、よく考え、専門的知識を持った方々、経験者と相談してからお話を進めください。

2020年10月20日 火曜日 14:38

上手く医療を受けるための話(2)

前回は主に、自分の納得できる主治医をどのように見つけるかについての話をしました。そこで今回は、私たちの周りにどのような医療機関があるかについて簡単に説明し、それらをどのように利用するべきかをお話させていただきます。

まずは、主治医オフィスとの関係についてです。特別病気がなくても、年に一度は身体検査と健康管理の相談のため、主治医を訪ねてください。そのようにして、主治医の先生、そしてスタッフの方々と顔見知りの関係にあると、何か体に異常が感じられたときなど、それほど遠慮せずにアドバイスを受けられると思います。主治医の先生に直接話すことが出来なくても、スタッフの方が適切な意見で取り次いでくださるようなオフィスが理想です。

次に知っておくべきことは、救急外来です。体が急に苦しくなった時などは、主治医にアポイントメントをとる時間がありません。そのような場合は、直接救急外来へ行くことをお勧めします。特に、呼吸困難、体の部分的な麻痺、失神、突然の胸の痛みなどがある時は、躊躇せずに救急外来に行くようにしてください。救急外来も主治医と同様に、ある程度は自分で選択できます。自宅の近所にあるいくつかの救急外来についての知識を持ち、いざという時にはここにお世話になりたいというところを決めておいてください。

救急外来へは自分で行く以外に、家族や知り合いに連れて行ってもらうこともできます。しかし、呼吸困難や、麻痺、意識の変化などがある場合は、救急車を呼ぶべきです。救急車をお願いすると、患者さんの居る場所から一番近い施設に運ばれますので、かならずしも自分の願った救急外来には行けないかもしれませんが、命に関わる症状がある時には、一刻も早く救急隊に診てもらい、救急外来へ運んでもらうのを何よりも優先しなければいけません。

2020年9月25日 金曜日 17:49

上手く医療を受けるための話(1)

皆様からのご質問に、「どうやったら良い主治医に出会えるのでしょうか?」というようなものがあります。とても大切な質問だと思います。私自身も自分のため、そして家族のため、主治医を選ぶのには時間をかけました。皆様へまず伝えたいのは「それは時間をかけ、努力して探すだけの価値があることですよ。」ということです。私たちは、家や車などを買うときには大抵時間をかけ、色々と調べた上で選びますよね。しかし、主治医に関しては言われるまま、または誰かに少し相談したくらいで簡単に決めてしまう方が多いのには驚かされます。私たちの健康は、ある意味で一番大切な賜物であるのに、その管理を手伝ってくれる主治医を選ぶ努力をしないということは、あまり賛成できません。

「主治医を選ぶ」という観念が、社会的にあまりないのは確かです。それゆえ、主治医は選ぶものではなく、主治医によって選ばれると考えがちなのかもしれませんね。保険会社も、主治医を選んだり変えたりというのをあまり喜びません。でも、私たちには選ぶ権利があります。そしてどの保険会社もそれを妨げてはならないという法律があるのです。ですから、主治医の選択については、あまり周りの言いなりになってはいけません。

それでは、どのようにして主治医を選べば良いのでしょうか。私がこれから書くことは、絶対的な法則ではなく、ましてやルールでもありません。ただ一つの参考としていただければ幸いです。先ずはじめに、自分がお医者さんに最低限望む資格や、そのお医者さんの過去においての経験などが挙げられます。それらは現在では一般公開されていますので、インターネットの医師会などで調べることができます。そこでは過去に法律を犯したとか、訴訟を受けたなどの情報が得られます。訴訟に関しては誤解しやすい点も多くありますので、それだけでは判断しない方が賢明です。でも、訴訟の回数が異常に多いと感じたら、安心感や信頼感を考え、その先生は避けた方が良いでしょう。

一番大切なのは、ご自身との相性です。その先生のオフィスを健診などで訪ね、自分である程度納得できるかを確かめてください。診療所のスタッフ、先生、利便性などをよく吟味しましょう。そしてある程度納得がいくのならば、数回はそこで診察を受けて様子を見ると良いでしょう。「ここしかない」とはじめから思えるようなところは滅多にありません。でも、かかればかかるほど安心感や信頼感の増してくるような診療所は手放さないようにすることをお勧めします。他の患者さんの意見や、看護婦さんなどの医療関係者たちの意見を求めるのも大切ですし、とても価値のある時間の使い方です。主治医が信頼できると、専門医が必要になった時や、保険会社の対応が必要となった時、安心して任せられるはずです。

次回は、どのような医療機関が自分の周りにあり、それらを利用できるかについて、少しお話をさせていただきます。それでは。

2020年8月20日 木曜日 15:31

脱水症の話

ここロサンゼルス近辺は、湿度が比較的低く気温も常に高めですので、過ごしやすい気候だとよく言われます。でもそんな中、気を付けるべき点も多くあります。それは脱水症です。

なぜ脱水症にあえてこだわるのか?その答えは、私たちの健康においてその水の大切さでしょう。私たちの体の大半は水でできています。体の水分の占める割合は生まれた時の90%を頂点として年齢とともに大人になるまで少しずつ減りますが、大人になっても約60%は水分です。水分が十分体に含まれていると、強い日差しにも、乾燥した空間にもある意味、一番の防御になります。ただし、そのためには常に水分を補給しなければなりません。砂漠などの乾燥した高温の場に日中さらされますと、気温が摂氏35℃位で1時間に1~1.5リットリの水分を失います。砂漠地帯の国立公園などもありますが、そのような場への外出時は必ず水を持って歩かなければなりません。少し迷子になった、予定より30分余計に歩かないといけないなどという状況で、水があるかないかが大事に至るかどうかを左右する場合もあります。

ロサンゼルスは今こそ立派な都市ですが、地域的には砂漠地帯です。海の側はまだいいほうで、20㎞も内地に入れば、紛れも無く砂漠気候です。気温が摂氏30℃を超える日の長期外出は水分の補給を十分に計画し準備なさってください。お子さんたちを連れて公園などに行くときは特に大切です。子供は大人より体重に比べて水を多く必要とします。遊びに夢中になり、脱水して日射病になるケースも南カルフォルニアでは少なくありません。

そして、年配の方々です。彼らは色々な理由で水分を取るのが少なくなり、脱水症になりやすいです。勿論、腎臓病などで水分の摂取量が制限されている場合もありますが、バランスよく体に必要な水分が保たれているようにしてください。発熱、下痢、嘔吐などは脱水症を促しますので、特に注意していただきたいです。頭痛、発熱、意識の異常なども脱水症の症状です。

水分補給の必要性は状況によって大分違いますが、一般的に健康な方は普通の生活上、一日大人でコップ8杯から10杯の水を飲むよう勧められています。乾いたなと感じる前に水を飲んでください。ゴルフなど外で過ごす時間の多い方々は、粘液に通常以上の粘りがでたり、唇がかさかさになることを目安にされるのも一つの方法です。最後に、脱水状態の時はアルコール飲料は禁物です。

それではまた。

2020年7月16日 木曜日 14:42

新型コロナウイルスとは④【Q&A】

会食に出席した場合、食中毒ならほぼ全員が症状が出ますが、新型コロナウイルスに感染する人と感染しない人にわかれるのはなぜでしょうか?

食中毒は、大抵感染性の非常に強い細菌が原因となります。食中毒においては食べ物を通して病原菌が確実に体の中に入るので、感染する可能性が高くなります。弱い病原菌ですと、私どもは毎日のように経口で体に入れているのですが、ほとんどの場合は胃液や唾液で感染が阻止されます。

 

COVID-19はウィルスで、感染経路は手から口、目、鼻の粘膜が主となっております。空気中の噴霧を吸い込むことにより感染する可能性もあります。多くの場合は手を消毒すること、そして手で目、口、鼻に触れないことにより感染は防ぐことができます。咳やくしゃみによりウィルスが空気中で噴霧となり、それを吸い込むことにより鼻や口の粘膜からウィルスが体内に侵入する可能性もありますが、ある程度の距離を感染者から保つことにより、感染する可能性は非常に低くなります。

このウィルスの場合、感染しても、感染者の免疫力、健康状態(慢性病の有無)などにより、病状の重度は大きく左右されます。

新型コロナウイルスの種類は1つですか?抗体を持っていたら、二度と感染する事はないんでしょうか?

COVID-19は、コロナウイルスの一種で現在は一つだけです。しかしウィルスの性質上これから異変が起こり、COVID-19の亜型ができる可能性はあります。

抗体を持っていたら感染する可能性は低くなりますが100%ではないようです。しかし現状ではその抗体が、体内にどれほど保てるのかについての結論は出ておりません。インフルエンザの場合ですと、抗体は感染後や予防注射の後、約か月ほど体内で作り続けられます。別の病原菌による抗体では、数年から数十年続くものもあります。

以前に感染され、回復された方の血清に含まれる抗体が新型コロナウイルスを撃退できるのはなぜでしょうか?

 

抗体は私どもの免疫の一部です。以前感染され、回復された方は体がコロナウイルスに反応し、そのウィルス特有の抗体を作ることにより、コロナウイルスを撃退します。その抗体は体内である程度の期間作り続けられ、再度の感染を防ぐ役割を果たします。

 

新しく感染し、まだ抗体が十分に作られる前に重症になった患者さんや、免疫力低下などの理由で抗体反応が妨げられている患者さんにとって、すでに出来上がった抗体を持った血清はコロナウイルスに対する即戦力となると考えられております。

インフルエンザは気温が低いと症状がでやすいですが、新型コロナウイルスも秋から冬にかけて増える様な気がします。

 

COVID-19に関しましては、まだ季節による感染性のデータが十分にありません。しかし、紙、プラスチック、金属などの表面におけるウィルスの生存率は、気温が上昇することにより劇的に低下します。ですので、少なくとも物質の表面から手にウィルスが、移動する可能性は低くなると考えられます。

COVID-19にかからないようにするための免疫力を付ける方法を教えてください

 

免疫力を上げる方法は、できる限りの健康を保つことです。

それにはあらゆる面で、バランスの良い生活が大切です。食生活、仕事のスケジュール管理、休憩、睡眠、運動などのバランスが含まれます。すぐにすべて実行することは難しいかもしれませんが、少しずつでも生活にバランスをつける方向へ進むことができればよいと思います。

たとえば、睡眠時間が足りなければ、昼寝を15分とる。

運動が足りない方は、朝10分、午後10分と仕事場でも、家でもできる簡単な運動法を工夫する。

一日数回深呼吸をする。ストレス対策を工夫する。祈り、または瞑想の時間を持つなどです。

タバコはできれば完全に止める。お酒は少々、それができなければ、完全に禁酒する。

高血圧、糖尿病などの慢性病の方は医師の指導のもとしっかりと管理する。

これらは当たり前のようですが、実証のある、とても大切な免疫力向上方法です。

 

皆様、どうぞくれぐれも気をつけてお過ごしください。

2020年6月18日 木曜日 09:27

新型コロナウイルスとは③

新型コロナウイルスに感染すると潜伏期間の後、倦怠感、熱、咳などの症状が診られるのですが、ほとんどの場合、症状は比較的軽く、家での休養が一番の治療とされております。中には症状が軽いため、感染していることも全く気付かずに普通に生活されておられる方もいることが最近の調査で明らかになってきております。

しかし一部の方々、特に慢性の持病を患われている方々、は感染が肺にまでわたり、重態に陥いる可能性が高いため、それらの方々にこのウィルスを伝染しないようにすることが感染対策の一番大切な点です。

新型コロナウイルスに感染した場合、現在可能な主な治療法を簡単にまとめてみました。

 

≪症状の軽い方≫

家での療養と熱や筋肉痛などの症状を軽減するための治療が主体となります。市販の痛み止め、炎症止めの薬が多く使われます。

≪呼吸に困難を感じる方々≫

この症状は、最初は軽くても進行がとても速い場合がありますので、できるだけ早く、医療機関に連絡してください。酸素などによるサポートが必要となります。状態が進行した場合、特殊な酸素マスクを必要とする場合があります。特殊な酸素マスクでも間に合わなくなりますと、人工呼吸器に切り替えられます。人工呼吸器を必要とする場合は麻酔を使い意図的に無意識状態で治療することになり、体に負担がかかりすぎると判断された場合には人工心肺装置を使うようになったケースもあります。人工心肺装置は血液を心臓と肺からバイパスし、酸素が直接血液に送られるようにする機械です。心臓手術などで良く使われます。

現在の治療法としては、症状を抑え、不全となった肺などの臓器をサポートしながら、体が自力で回復するのを待つのが一般となっております。

 

【薬】

➀クロロキンと言う抗マラリア剤が新型コロナウイルスに効くとの小規模論文がいくつか出され、それをベースに米国での治療のために緊急使用許可が出されました。しかし、その後に発表された国立衛生研究局(NIH)のデータレポートによると効果はまだ証明できず、心臓などへの副作用が問題とされております。

②Remdesivirと言う抗ウィルス剤が新型コロナウイルスの感染を動物実験で効果的に抑えるとのデータが出ており、その有効性が期待されておりますが、まだ最終的な結論は出ておりません。

③新型コロナウイルスの合併症に血栓があります。そのため、重症な方々への定期的な抗凝血剤の使用の必要性も話し合われております。

【薬剤以外の治療】

➀以前感染され、回復された方の血清に含まれる抗体が新型コロナウイルスを撃退するとの仮説のもと、それらの血清治療を数人の方々が試験的に受けられました。それにより危篤な状態から回復することができたとのレポートが出始めております。最終的な結論には至っておりません。

②ワクチンを現在多くのの製薬会社が開発しております。これが完成すれば、インフルエンザのように、多くの方々が感染を防ぐことができ、また感染された方々の治療にも役立つことでしょう。ワクチンの完成にはまだ12か月から18か月を要すると報告されております。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)は発見されてまだ日が浅く、対応法が研究されているのが現状です。しかしこれに対する理解は日々高まっており、しっかりとした予防、治療などの対策事項によりこの病気を社会的に屈服できる日もそれほど遠くはないのではと思い願っております。

皆様、どうぞくれぐれもお気をつけください。

2020年5月25日 月曜日 13:24

新型コロナウイルスとは②

昨年12月に発見され、数か月のうちに世界中を巻き込んだCOVID-19ですが、まだその勢いがいつ収まるのか予測はできません。最近のデータでは、感染拡大する加速度が少し下がってきているとの報告がありますが、感染の拡がりはまだ続いております。感染のルートを辿ることにより、いくつかの感染減速に欠かせない手段が政府や自治体などから提示されております。

➀まず、手をよく洗う。

新型コロナウイルスが私たちの体に入る感染経路は、目、鼻、口です。主に手によって、目、鼻、口へ菌を運び、一番大きな要因となっています。ですので、手が常に清潔な状態であれば、感染する可能性は大きく減ります。できるだけ、手で目、鼻、口を触れないようにすることが大切です。もし触れる必要がある際には、必ず、触れるその前に手を洗う、または、消毒をすることを強くお勧めいたします。手を洗う場合は、石鹸で手のひら、甲、指全体、手首までよく洗ってください。

②外出する場合はマスクをする。そして人と人との間隔を常に最低1,8m、2mを保つ。

この菌は、空気中にも数時間滞在するということが確認されました。感染者の唾液など粘膜液が咳、会話などで空気中に飛沫として出ますと、一部が噴霧として空気中にある程度の間残ります。飛沫自体はすぐに地に落ちるのですが、この空気中に残った噴霧を鼻や口から吸ってしまうと感染する可能性が高まります。また、くしゃみや咳をマスクなど無しでされた場合、飛沫が数メートル先まで飛びます。菌の飛散をできるだけ防ぐために、マスクなどで飛沫が空気中に飛ぶのを抑えることが大切です。私ども一人一人の心がけが、感染リスクの軽減に繋がります。

③倦怠感、熱、咳、体の痛みなどの症状がある場合検査を受け、2週間の隔離が必要。

症状が出始めましたら、検査を受けることと、隔離されることが大切です。検査が陰性であっても、隔離されることをお勧めいたします。その理由として、今出回っている多く検査器具はまだ緊急承認の状態な為、正確率がまだはっきりとしていない場合もあるからです。

④感染が診断された患者さんに医療保護具なしで接触された場合、2週間の隔離が必要。

この病気の伝染率が高い理由の一つは、感染者の潜伏期間が長いためです。その間、多くはほとんど症状がないため、健常者と思って普通の生活をしている間に菌を拡げてしまいます。検査をする必要はありませんが、2週間の隔離し、その間症状が無ければ感染の可能性はとても低いです。しかし、その間に症状がでましたら、検査とさらなる隔離をお勧めいたします。

⑤タバコなどによる肺の疾患、糖尿病、高血圧、腎臓病、肝臓病などの慢性疾患のある方々、その周りの方々は特に注意する。

これらの方々、またその周りの方々は、上記に示した事項を特に実行されることをお勧めいたします。慢性病、特に肺の病気を持っておられる方々は肺炎になりやすいです。

次回は治療についてお話いたします。

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プロフィール

Dr. Yutaka Niihara(新原豊), MD, MPH

1959年生まれ。東京都出身。
ロマ・リンダ大学宗教学科卒、同大学医学部卒。
ハーバード大学公衆衛生学修士卒。
Emmaus Life Sciences, Inc. President and CEO
UCLA 医学部教授(University of California, Los Angeles Harbor-UCLA Medical Center)

エマウス・メディカル・ジャパン株式会社

107-0052 東京都港区赤坂2-16-6 BIZMARKS赤坂 4F TEL:0120-48-8250 / FAX:03-6555-5485
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