2019年8月22日 木曜日 10:17
今、飛行機の中でこの原稿を書いているのですが、よく聞かれるようになった病名の一つに”エコノミークラス症候群”がありますね。これは、足から心臓の右側に至る所までつながっている大きな静脈の中で、血液の循環が悪くなったため、血の塊ができてしまう事によって起こる病気です。静脈血管内で凝血を起こしますと動脈と違い、幸い細胞や組織の酸欠や壊死などはめったにありません。しかし、炎症を起こします。そして、その周りが腫れ、痛みを伴うようになります。最悪の場合、固まった血の塊が心臓右室を通り肺動脈までたどり着き、呼吸難や心不全などを起こし死に至ることもある、とてもバカにはできないのです。
もともと血液とは、一寸したことでも凝結して、怪我をした場合でも出血を最少限に抑えることができます。しかし、血管内にはいろいろな仕組みがあり、血が常に液体としての状態を保てるようにしております。ですので、考えて見ますと逆に、血管の中で血が固まらないということはとてもすごいことなのです。
血液が血管の中を常に川のように一つの方向へ向かって流れているということが、血が固まるのを防ぐ一つの条件です。狭い場所でジッとしていることが、また空気が乾いた所で十分に水分を取らないでいますと、血が濃くなり流れにくくなります。飛行機の中というのは、まさにその二つのコンディションが重なった場所ですね。言うまでもなく、別に飛行機の中でなくとも同じ様な状況は私たちの生活の中でよく見かけます。たとえば長期間のバスでの移動、自動車の遠乗り、家の中で動かずに長期間テレビを座って観ているときなどです。もちろん、そのような状態でも、”エコノミークラス症候群”はおこりえます。
予防としてできることは簡単ですし、多くあります。まずは、一時間に一度ぐらい、立つなどして足を伸ばし、動かすこと。足の筋肉がポンプのような動きをして血液を心臓へ向けて流してくれます。次に、水分を適度に取り、脱水を防ぐこと。水分の必要性は、健康な人とそうでない人では差がありますので、主治医の先生からアドバイスをいただいて下さい。それから、私の場合、長時間の飛行機旅行の前には、搭乗前にアスピリンを一錠飲みます。アスピリンは血小板の活性化を防ぎ、血栓などができにくくするからです。これも多くの方がすでにされていることですが、個人差がありますので、一応、使用前に主治医の先生と相談してください。
タバコは、たとえ一服でも血液をどろどろにしますので控えることをお勧めします。その他、糖尿病、ネフローゼ、高脂肪症などをはじめとする、多くの疾患は血を固まりやすくします。当てはまる方は、やはり主治医の先生方に相談してください。
それでは、この次の連載まで皆様の健康を願いつつ、又、私自身も注意して旅行してまいります。
Dr. Yutaka Niihara(新原豊), MD, MPH
1959年生まれ。東京都出身。
ロマ・リンダ大学宗教学科卒、同大学医学部卒。
ハーバード大学公衆衛生学修士卒。
Emmaus Life Sciences, Inc. President and CEO
UCLA 医学部教授(University of California, Los Angeles Harbor-UCLA Medical Center)
107-0052 東京都港区赤坂2-16-6 BIZMARKS赤坂 4F TEL:0120-48-8250 / FAX:03-6555-5485
Copyright© AMINO PURE. ALL Rights Reserved.